「毎日動いているのに、売上が安定しない」
「SNSも営業もやっている。でも、何を改善すればいいのかわからない」
「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」
この記事は、こうした悩みを持つ、起業1〜2年目の経営者・個人事業主に向けたものです。
売上が安定しないときは、資金繰りを確認した上で、集客・販売・業務のどこで成果につながらなくなっているかを、数字で切り分けましょう。原因によって、優先すべき改善策は変わります。
投稿本数を増やす。営業件数を増やす。広告を出す。新しいサービスを作る。
もちろん、行動量が必要な場面もあります。しかし、事業のどこに問題があるのか分からないまま施策を増やしても、結果につながらないことがあります。
そこで重要になるのが、「何をやるか」を増やす前に、「どこで止まっているのか」を見つけることです。
この記事では、起業初期の経営者が見直したいポイントを、資金・集客・売上・仕組みの4つに分け、確認する数字と最初に取る行動を解説します。
売上が安定しないときに確認する4つの課題
最初に、現在の悩みを次の表に当てはめてみてください。複数に該当する場合は、支払いに間に合うかを先に確認し、その上で利益や業務への影響が大きい課題を選びます。
経営課題と最初に確認すること
| 課題 | よくある状態 | 確認する数字 | 最初の行動 |
|---|---|---|---|
| 資金 | 売上があっても支払いが苦しい | 現預金、入出金予定、毎月の資金減少額 | 資金繰り表で不足する時期と金額を確認する |
| 集客 | 問い合わせが少ない・顧客層が合わない | 流入経路別の問い合わせ数・成約数 | 成果につながる経路と離脱箇所を調べる |
| 売上 | 商談はあるが契約や継続につながらない | 成約率、購入単価、継続率、粗利益 | 失注・解約理由と提供内容を見直す |
| 仕組み | 社長が忙しく、対応や納品が遅れる | 業務別の時間、対応待ち件数 | 定型業務の手順化・分担を進める |
以下の数値は、考え方を説明するための仮定例です。PPconnectの支援実績や業界平均を示すものではありません。売上・受注額・販売価格の例は税抜です。現預金・入出金は、実際の残高やお金が動く金額として扱います。
売上が伸びない原因は?顧客数・購入単価・購入回数に分解する
「売上が伸びない」という悩みは、一見すると一つの問題に見えます。
しかし、実際には原因によって必要な対策は大きく異なります。
例えば、売上をシンプルに分解すると、次のように考えることができます。
対象期間の売上 = その期間に購入した顧客数 × 1回あたりの平均購入単価 × 1人・1社あたりの平均購入回数
顧客数は重複を除き、購入単価は「売上÷購入件数」、購入回数は「購入件数÷購入顧客数」で計算します。すべて同じ期間・対象のデータを使います。顧客単価を「期間中の1顧客あたり売上」としている場合は、購入回数をさらに掛けないようにしてください。
さらに、新規顧客の獲得部分だけを見ると、次のようにも整理できます。
新規の受注額の見込み = 見込み客数 × 見込み客からの成約率 × 1件あたりの平均初回受注額
これは営業計画の概算式です。受注した金額が、そのまま当月の売上や入金になるとは限りません。売上計上の時期と入金予定は別に確認します。
つまり、「売上が足りない」という結果だけでは、何を改善すればいいのか判断できません。
例えば、ある月に獲得した問い合わせ100件の結果を追跡し、成約が5件だった場合、問い合わせからの成約率は5%です。ただし、5%という数字だけで良し悪しは判断できません。商談内容や商品設計、価格設定に加え、問い合わせ元の顧客層が商品と合っているかも確認します。
一方で、成約率が高くても問い合わせ自体が月3件しかなく、納品・提供に余力があるなら、認知や集客の強化が候補になります。件数が少ない場合は複数月の傾向も確認しましょう。
そのため、最初にやるべきことは、自社の数字を分解して、どこがボトルネックになっているかを確認することです。
課題1|資金繰り:現預金があと何か月持つかを確認する
売上が発生していても、資金繰りが苦しくなることがあります。売上の入金より仕入れ・外注費の支払いが先に来る場合や、借入元金の返済などがある場合です。
売上・利益・手元資金は、それぞれ別の数字です。利益が出ていても、支払日に使えるお金が足りるとは限りません。
まずは、次の数字を確認してみてください。
- 現在使える現預金はいくらあるか
- 毎月の固定費はいくらか
- 毎月の入金額と支出額はいくらか
- 売掛金はいつ入金される予定か
- 税金・社会保険料・借入返済・設備購入など、大きな支払いはいつあるか
毎月一定額の資金が減る場合の継続可能期間の目安 = 使える現預金 ÷ 毎月の資金減少額
例えば、現預金が300万円、毎月の入金が100万円、支出が200万円なら、毎月の資金減少額は100万円です。追加の調達や臨時支出がなく、この状態が続くと仮定した場合、単純計算の目安は3か月です。
逆に、現預金が100万円でも、毎月の支出が30万円、入金が35万円なら、月単位では5万円増える計算です。この場合、上の式で「あと何か月」とは算出できません。ただし、入金日より先に支払いが集中すれば、月途中に不足する可能性があります。
つまり、確認すべきなのは「今いくら持っているか」だけではなく、現在の状態を続けた場合、あと何か月事業を継続できるのかです。
最初の行動:今後3か月を起点に、大きな支払いと売上の入金予定を並べた資金繰り表を作ります。必要に応じて期間を延ばし、支払いが厳しい場合は週別・日別でも残高を確認してください。
資金調達は、必要額・使い道・入金時期を事業計画と合わせて考える
資金不足が見えてきた場合は、支出や入金条件の見直しと並行して、融資などを検討します。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金など、対象条件・資金使途・返済期間を公式情報で確認してください。利用には審査があります。
融資と補助金は、同じ資金確保の手段として扱わないことが大切です。融資には返済が必要です。一方、補助金は制度ごとの要件・対象経費があり、原則として事業実施後の精算払いです。目先の支払いに間に合うかは別に判断します。出典:中小企業庁「補助金とは」。
ただし、資金調達を考える際に大切なのは「いくら借りられるか」だけではありません。
本来は、次の順番で整理する必要があります。
- 何のために資金が必要なのか
- いつまでに、いくら必要なのか
- その資金を何に使うのか
- 使った結果、売上・粗利益・入金がどう変わるのか
- 融資の場合、どの資金から返済し、売上が計画を下回った場合にどう対応するのか
例えば、300万円を調達して広告費に使うのであれば、顧客獲得件数と売上に加え、原価を差し引いた粗利益、広告費の回収時期、入金までに必要な運転資金も試算します。広告費などを差し引いて利益が残るかを確認します。さらに、利益が見込めても入金より先に支払いが発生する場合は、その間の資金を確保する必要があります。
一時的な資金不足への対応が必要な場合もあります。その場合も、不足の原因と改善策を事業計画に落とし込むことが重要です。
課題2|集客:問い合わせと成約がどこから生まれているかを確認する
「集客できない」と感じると、SNSや広告、SEOなどの施策を増やしたくなるかもしれません。
まずは、現在の顧客がどこから来ているのかを整理します。
- 紹介
- SNS
- Google検索などの自然検索
- 広告
- 営業
- イベント
既存顧客からのリピートは、これらの新規獲得経路とは分けて集計します。複数の経路に接点がある場合は「問い合わせ時に申告された経路」などのルールを決め、分からないものは不明として残します。
例えば、新規顧客の売上の7割が紹介から発生しているのであれば、紹介を依頼するタイミングや紹介先向けの説明資料を整えることが改善策の候補になります。ただし、特定の紹介者への依存度や紹介件数の伸びしろも確認しましょう。
一方で、SNSのフォロワーが多くても問い合わせがほとんど発生していないのであれば、問題はフォロワー数ではなく、導線設計にあるかもしれません。
最初の行動:顧客管理表に「獲得経路」を追加し、経路別の問い合わせ数・成約数・売上・粗利益を並べます。広告費や営業工数も確認し、件数と採算の両面から改善する経路を選びます。
集客導線は、ページ閲覧から問い合わせ・成約まで確認する
集客導線は、大きく分けると次のように考えられます。
認知 → 興味 → 比較 → 問い合わせ → 成約
SNSで認知を取れていても、プロフィールからサービスページへ進む理由がなければ問い合わせにはつながりません。
また、ホームページにアクセスがあっても、サービス内容や料金、実績、問い合わせ方法が分かりづらければ離脱されてしまいます。
そのため、「アクセス数」だけではなく、次の数字を見ることが重要です。
- サイトへの訪問数(セッション数)
- サービスページを閲覧したセッション数
- サービスページ閲覧後に問い合わせフォームを閲覧したセッション数
- フォーム閲覧後に送信を完了したセッション数
- 重複・営業連絡などを除いた有効な問い合わせ件数
- その問い合わせからの商談件数・成約件数
例えば、フォーム完了率は「フォーム閲覧後に送信完了したセッション数÷フォームを閲覧したセッション数×100」で計算できます。同じ期間と計測条件で比べ、電話など別経路からの問い合わせは別に記録します。
サービスページには、対象となる顧客、提供内容、料金の目安、確認可能な実績、相談後の流れを分かりやすく掲載します。計測した数字に合わせて、説明不足やフォームの入力負担を見直しましょう。
この数字を見ることで、単純に集客が足りないのか、それとも集客後の導線に問題があるのかが見えてきます。
課題3|売上:成約率・購入単価・継続率を見直す
集客ができているのに売上が伸びない場合は、次に販売部分を確認します。
特に確認したいのは、次の3つです。
1.成約率:商談から契約に進まない理由を確認する
問い合わせからの成約率と、商談からの成約率は分けて管理します。分母が異なる数字を比較すると、改善の判断を誤りやすくなります。
結果が確定した商談の成約率 = 成約件数 ÷(成約件数+失注件数)×100
例えば、同じ月に開始した20件の商談を追跡し、全件の結果が確定して成約2件・失注18件なら、成約率は10%です。検討中の案件は失注に含めず、別に件数と経過日数を管理します。
この場合、商談数を40件に増やす前に、失注した18件の理由を確認することが改善策の候補になります。
価格なのか、提案内容なのか、商品そのものなのか。
予算・導入時期・決裁者の関与・競合との違いも含め、確認できた理由を記録します。分からない理由を推測で埋めないことも大切です。
仮に、平均初回受注額10万円、20件の商談がすべて決着する条件なら、成約率10%で受注額20万円、20%で40万円となります。これは感度を見るための計算例で、成約率の改善を保証するものではありません。受注額に加え、粗利益と提供に必要な工数も確認しましょう。
最初の行動:直近の成約・失注・検討中案件を分け、失注理由と顧客層に共通点がないかを確認します。
2.購入単価:提供価値と粗利益の両方を確認する
売上は顧客数だけではなく、単価によっても大きく変わります。
例えば、同じ月に10社へ1回ずつ販売し、すべてその月の売上として計上する場合、1社あたり3万円なら売上30万円、10万円なら売上100万円です。
ただし、単純に値上げすればいいわけではありません。
サービス内容、提供範囲、成果、競合との違いなどを整理した上で、価格が適正かどうかを判断する必要があります。
粗利益 = 売上 − 売上原価です。単価が上がっても、仕入れや外注費などの原価がそれ以上に増えれば粗利益は減ります。社長自身の作業時間も記録し、案件ごとの負担を見落とさないようにしましょう。
最初の行動:主要商品・サービスごとに、販売価格、提供範囲、原価、作業時間を並べます。その上で、追加対応の有料化やプランの分け方を検討します。
3.継続率・リピート率:利用が続かない理由を確認する
新規顧客を獲得し続けなければ売上を維持できない状態は、経営が不安定になりやすくなります。
そのため、継続契約やリピートが可能な事業であれば、既存顧客がどれくらい継続しているかも確認してください。
継続契約では、例えば「その月の更新対象顧客のうち、更新した顧客の割合」を継続率として管理します。更新対象20社のうち18社が更新した場合は90%です。
リピート購入では、例えば「初回購入後90日以内に再購入した顧客の割合」と定義し、90日間の観察が完了した顧客を対象に計算します。期間は自社の商品・サービスの購入間隔に合わせて設定します。
例えば、毎月10社を新規獲得していても、同じ数だけ解約していれば顧客数は増えません。
ただし、顧客数が同じでも、契約単価やプラン変更で売上は変わります。解約件数に加え、失われた売上・粗利益と、利用を続ける顧客の特徴も確認しましょう。
最初の行動:解約・再購入しない理由を確認し、初回利用時の説明、利用開始後の支援、期待と提供内容のずれを見直します。新規集客と継続改善のどちらを優先するかは、採算と改善余地を比べて判断します。
課題4|仕組み化:社長に集中している定型業務を減らす
売上が伸びてくると、次に問題になりやすいのが業務量です。
起業初期は、営業、顧客対応、請求、採用、マーケティングなど、多くの仕事を経営者自身が担当します。
その状態で案件が増えると、対応の遅れや営業に使える時間の不足が起きることがあります。
社長の稼働時間が、受注や提供できる量の制約になる場合があるためです。
そこで一度、現在の仕事を次の3つに分けてみてください。
- 社長にしかできない仕事
- 他の人でもできる仕事
- そもそもやらなくてもいい仕事
例えば、重要な商談や事業戦略の決定は社長が担当する必要があるかもしれません。
一方で、日程調整、請求書作成、定型的な顧客対応、データ入力などは、他の人やシステムに任せられる可能性があります。
最初の行動:1週間の作業内容と所要時間を記録し、繰り返し発生する業務を1つ選びます。手順と完了条件を整理し、担当者への引き継ぎや自動化を小さく試します。
導入後は、削減できた時間だけでなく、ミスの件数や顧客への応答時間も確認します。効率化の費用と運用の負担が、得られる効果に見合うかを見直しましょう。
そのため、事業を大きくしていく段階では、単純な効率化だけではなく、経営者の時間をどこに使うかという視点が重要になります。
何から改善すればいい?優先順位は「緊急度」と「影響度」で決める
ここまで読むと、「結局どこから手をつければいいのか」と感じるかもしれません。
その場合は、課題を次の2つの軸で整理してみてください。
- 緊急度:今すぐ対応しないと事業継続に影響するか
- 影響度:改善した場合に売上・粗利益・資金繰りへの影響が大きいか
例えば、今の入出金計画では2か月後の支払いに不足が出るなら、資金繰りへの対応を優先します。支出の見直し、取引条件の協議、資金調達の相談などを検討しながら、短期の受注・回収につながる活動も進めます。
一方で、当面の支払いを賄える見通しがあり、商談数も多いのに自社の過去実績より成約率が下がっているなら、営業や商品設計の改善が候補になります。「半年分あれば安全」などの一律の基準ではなく、大口入金の確度や支払日も確認してください。
このように、現在の状況によって最優先で取り組むべき課題は変わります。
同じ程度に重要な課題が複数ある場合は、必要な費用・時間・効果が出るまでの期間も比べます。今月の主な改善指標と施策を1つずつ決め、担当者と確認日を設定しましょう。
起業初期の経営課題を確認する10項目のチェックリスト
現在の事業状況を確認するためのチェックリストをまとめます。「把握している」と言える項目は、実際の数字や記録を見ながら確認してください。
- 毎月の売上・粗利益・営業利益を把握している
- 入出金予定を並べ、現預金が不足する時期と金額を確認している
- 新規顧客の主な獲得経路を把握している
- 経路別の有効な問い合わせ件数を把握している
- 商談からの成約率を、同じ分母・期間の定義で把握している
- 購入単価・原価・提供にかかる工数を把握している
- 事業モデルに合う継続率・リピート率を把握している
- 失注・解約理由を、確認できた情報に基づいて整理している
- 社長しかできない仕事と、任せられる定型業務を整理している
- 今月最も改善すべき数字、施策、担当者、確認日が決まっている
もし、この中で「分からない」という項目が複数ある場合は、新しい施策を増やす前に、まず現在の事業を整理するところから始めることをおすすめします。
起業初期の売上・資金繰りに関するよくある質問
経営の数字を記録していない場合、何から始めればよいですか?
まずは通帳・請求書・契約書・問い合わせ履歴から、直近の月の売上、入出金、問い合わせ数、成約数を集めます。分からない項目は不明のまま残し、今月から同じ項目を記録してください。過去データの整理と、急ぎの支払いへの対応は並行して進めます。
SNS・広告・紹介のうち、どれを優先すべきですか?
一律には決められません。対象顧客との相性、これまでの成約実績、獲得費用、成果までの期間で比較します。既存経路に改善余地があれば強化し、新しい経路は使える予算と検証期間を決めて試します。
経営相談の前に、何を用意すればよいですか?
可能な範囲で、直近の売上・主な支出・現預金、入出金予定、商品やサービスの内容、問い合わせ・商談件数を整理すると、課題を共有しやすくなります。資料が揃っていない場合は、現在困っていることと確認できる数字をまとめておきましょう。
起業初期の経営課題は、PPconnectへご相談ください
PPconnect株式会社は、起業家・経営者の事業全体を見ながら、次に必要な一手を一緒に考えるインキュベーション会社です。
まず現在の事業状況を整理し、資金、集客、売上、業務体制などのどこに課題があるのかを確認します。
その上で、今の事業にとって優先度の高い打ち手を一緒に考えていきます。
起業・事業支援に関する詳しい内容は、PPconnectの事業・サービス紹介をご覧ください。
経営課題は、必ずしも最初から明確になっているわけではありません。
- 売上が伸びない理由が分からない
- 資金調達をすべきなのか判断できない
- 集客を増やすべきか、商品を見直すべきか迷っている
そのような段階でも、まず現状を整理することで次に取るべき行動が見えてきます。
お問い合わせには、現在の事業内容と困っていることを、分かる範囲でご記入ください。